著者は1998年に山梨と長野の県境にある山里に家族で移住。
「こんなに素敵なところに住んでしまって大丈夫なのだろうか?」、そんな不安を抱えつつも、「科学技術がこれだけ発達した今、都会に密集して暮らす必要はないのではないか? 山や海へと人が分散し、必要以上にお金を稼がなくても、十分に楽しく暮らしていけるのではないか?」そんな思いが、移住を後押ししました。
著者が目指したのは、”ヒトも生態系の一員として暮らすこと”。虫や草を無闇に排除するのではなく、その力を借りながら自然の恵みをありがたくいただくというのが基本の姿勢です。
タイトルにある「自給知足」という言葉は、著者が生み出した造語。自給的な暮らしを土台にしながらも「無理はせず」「足るを知る」をモットーに、好奇心優先で、暮らしに関する面白そうなことを少しずつ積み重ねていく。そうすることで、過程を楽しみながら、お金をそれほど必要としない暮らしを実現しよう、という思いが込められています。
本書で紹介する数々のアイデアや工夫は、そんな自給知足の暮らしの中で育まれてきたもの。山里に暮らす読者にとって有意義なのはもちろんですが、山里に暮らさずとも災害時の知識としても役立ちそうなノウハウが詰まっています。読み物としても刺激的で、ソローの『森の生活』現代版ともいえる、アイデアに満ちた新しい暮らしの提案書です。
(2025年10月7日発売)